民泊新法が6月9日に成立 マンションは規約改正を急げ!
6月9日に「住宅宿泊事業法」が参議院本会議で可決・成立し、早ければ来年(2018年)1月にも施行される見通しとなりました。
この「住宅宿泊事業法」(民泊新法)成立に伴い、国土交通省は「マンション標準管理規約」の改正(案)に関するパブリックコメント(意見公募)を開始し、今夏にも民泊新法対応の標準管理規約を発表する目論見のようです。
違法民泊とはどんなもの?
さて、以前僕は、分譲マンションでの違法民泊は反対の立場とこのブログで書かせて頂きました。
今までの分譲マンションでの民泊実態は目に余るものがあったからです。
具体的には、
①エントランスで大勢の外国人が鍵の受け渡しのためか長時間たむろし、声高に騒ぐ。
②廊下、エントランスにゴミを平気で捨てる。
③ビジタールーム、パーティールーム等の共用施設で乱痴気騒ぎを行い、ゴミを散らかし共用設備を壊して、しかも民泊をさせた区分所有者は自分ではないと責任逃れをする。
④民泊の室内でも同様に騒ぐ。(恐らく貸し切りプライベートパーティールームぐらいの認識なのでしょう。)上下両隣のお宅に騒音被害発生。
⑤管理組合が民泊使用中止を求めても絶対に止めない。(Airbnbは募集中止に対するペナルティがあるとのことで民泊事業者は一旦募集開始した分は絶対に止めません。要するに管理組合のルールよりも自分の利益を優先する考えの方が民泊を行っていたのです。)
⑥区分所有者に民泊中止を求めても、賃借人・転借人が民泊を行っていてしかも連絡が取れないと言い訳される。とにかくクレーム受付窓口がはっきりしない。
⑦ビジタールーム等の共用施設で民泊を行う。例えば一泊3000円のビジタールームを多日数予約して、一泊8000円で民泊貸し出しをして儲ける。他の区分所有者は民泊事業者が予約を取っているので共用施設であるビジタールームが実質的に使用出来ない状態となる。
等々です。
泊まりに来る方も安い宿、コスパのいい宿くらいの気持ちで来るので、一般の方々が自己の住居として平穏に暮らしていることなど気にも止めていません。
そんな「民泊」に僕が賛成出来ないのはお解り頂けると思います。
ところが、今回成立の民泊新法(住宅宿泊事業法)はなかなかの優れもの。条文をひととおり確認しましたが、これなら分譲マンションでも、管理規約、使用細則を整備して、一定のルールのもとで実施するなら行ける=行ってもよいのではと言える内容となっています。
まず、民泊新法では民泊の類型として
①家主が同時に宿泊するケース(家主居住型)
と
②家主は同時に宿泊しないケース(家主不在型)
に分け、
さらに、年間宿泊最大日数を180日としています。
そして、対象となる施設を「住居」としており、決して旅館業法の対象としての設備等を整えた簡易宿泊所等を対象としているのではないことが特徴です。
これは重要なポイントであり、
次の問題を引き起こします。
民泊新法成立で起きる問題とは?
①現行の国土交通省のマンション標準管理規約に準じた用途の定め方では、民泊新法に基づく民泊を防げない。(だから国土交通省は標準管理規約の改正を目論んでいるのです。)
②既に民泊禁止の規約改正を行っているマンションにおいては、民泊新法による「民泊」(以後、「新法民泊」とします。)が出来なくなってしまっている可能性。
まず、①「現行の国土交通省のマンション標準管理規約に準じた用途の定め方では、民泊新法に基づく民泊を防げない。」について。
今までの国土交通省の見解や民泊関係での裁判例では、マンション標準管理規約での記載に準じた「専ら住宅」用途では民泊使用は出来ないとされていたのですが、この「民泊新法」では「専ら住宅」でも出来ると解される可能性が高くなります。最大宿泊日数を180日としたのも、一年(365日)のうちの過半数は住宅用途に供しているとの形をとることにより、主たる用途が住宅であるとの形式を備える為とも考えられます。
今までの分譲マンションでの民泊はほぼ間違いなく違法なもの。分譲マンションの一室で旅館業法の簡易宿泊所として許可を得られるとは考えづらく、首都圏では大田区の条例民泊しか適法なものはない状況です。 しかし民泊新法は、一般の住宅(マンションも含まれます)であっても、用途制限に拘わらず(ホテル等が設置出来ない住居系用途地域であっても)民泊を可能とするための法律。最終的には裁判で決着つけるしか無いかも知れませんが、新法民泊での利用に対して管理規約の定めが住居専用であることを持っての用法違反を問うことは大変難しくなったと考えます。
次に②「既に民泊禁止の規約改正を行っているマンションにおいては、「新法民泊」が出来なくなってしまっている可能性。」について。
違法民泊(現時点での分譲マンションでの民泊はほとんどが違法です。)に対する対抗策、抑止力として、民泊行為の一切を禁ずる管理規約改正を行っている分譲マンション管理組合も多くあります。それぞれの規約内容を確認しないと当然はっきりしたことは言えないのですが、新法民泊も含めて一切を禁止する内容になっている可能性が高いと思われます。
ところが今回の民泊新法、後で述べますがある意味よく出来た内容となっており、民泊禁止の規約に対しては住居の使用方法として区分所有者が自己の部屋を適法に使用収益する行為を不当に制限するものとの主張がなされる可能性が出てきます。新法民泊は住居としての適法な利用方法のひとつなのだから、管理規約での制限はやめてもらいたいとの意見が出てくるのではと言うことです。
今までは、住居の利法方法として自己使用するか賃貸するかぐらいしかしか無かったところに、「新法民泊」、という新たな選択肢がが出来たのですから当然です。
新法民泊の具体例
ここで、新法民泊の具体例を考えてみましょう。
①家主居住型(宿泊時に家主が同時に在宅していることが条件)
例:子供が成人となり独立して遠隔地で就業・結婚。子供や孫が来るのは夏休みと正月だけ。
3LDKのマンションも1部屋が空いた状態。夫婦二人では(または死別等で一人では)寂しいので夏休みと正月、GW以外の時期に新法民泊で客人を迎え入れることを希望されているケース。
②家主不在型(宿泊時に家主は同泊していない)
都心のマンションの他に長野に別荘、熱海にリゾートマンションを保有しており、定年退職後、夏は長野、冬は熱海でほとんどを過ごすように。夏冬の計数十日程度だけ自宅マンションを新法民泊で提供したい。
このような内容であれば、分譲マンションでの民泊を受け入れることは十分可能なのではないでしょうか?自己の生活の本拠としてのマンションで放埒な使用を許すとは考えづらいですし、民泊新法には、外国語による各種注意事項の説明(民泊新法第9条)、苦情への対応(同第10条)、宿泊管理業者への委託制度(同第11条)等、今までの違法民泊での問題点を解消するための制度が法律内でしっかり整えられており、今までの違法民泊のような近隣や共用施設への被害は出づらいものと思われます。
民泊新法では、各自治体での条例による制限を認めていますが、どうやら国土交通省は100%制限する(民泊日数の上限を0泊とする。)ような制限条例は認めない方針とのこと。
管理組合は自治体とは違いますが、新法民泊を100%制限・禁止するのは、私権・所有権を不当に制限するものだと言う意見が出てきてもおかしくありません。
自己使用はいいけど賃貸にするのはダメなんて管理規約ができたら皆さん怒りますよね。同じことです。
マンションは管理規約改正を急げ!
この民泊新法、早ければ来年(2018年)1月にも施行されるかもしれないとのことであり、しかも、施行と同時に新法民泊が出来るよう、施行前に各種届け出の受付を開始する予定とのこと。違法民泊で被害が拡大するのを抑えるためにも、適法で廻りに迷惑をかけない対策が取られた新法民泊の普及が必要との考えでしょう。分譲マンションでも、新法民泊ならやってみたいと考えられる方が大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
国土交通省パブリックコメントの民泊対応管理規約改定案は基本的な例を示しただけで、実際のマンションで適応するにはより細かい定めと細則の設定が必要になるものと考えます。
民泊新法施行後の混乱を避けるためにも先手を打って対応規約改正が必要です。