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​第三者管理(管理者管理)の問題点

自己契約

 第三者管理(管理者管理)について、『管理会社が「管理者」に就任するパターンがほとんど』(管理会社が理事長代行してしまう。)なのですが,実はこれが問題なのです。管理会社と管理組合は管理委託契約を締結します。管理に必要な事務や、管理員の派遣、建物の清掃、設備の保守等を管理会社にしてもらうためです。この契約の当事者は管理組合と管理会社になるわけですが、管理組合の代理人となるのが管理者なので、自己契約、すなわち契約の当事者が一緒になってしまって利益相反が起きてしまうのです。もちろん、実務上は、総会であらかじめ締結する管理委託契約の承認をしているので直ちに問題になるわけではありません。参考に民法の該当条文を紹介します。

第108条(自己契約及び双方代理)
「同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。」

このただし書きに従い、『あらかじめ許諾した行為』とする為に先ほど言ったとおり、事前に総会で承認しておく必要があります。この総会承認の手続きがされていなければその時点で利益相反行為であることが明確になってしまいます。そして、これだけではありません。管理会社はマンションの管理のために様々な仕事を自らする場合があります。契約外の清掃業務や、故障、破損した建物や設備の修繕など。これらを管理会社が自ら元請けとして行う場合(費用の支払先が管理会社になる)は、事前に総会の承認がなければいけません。総会の事前承認が無い場合は、「無権代理」となりますので、管理組合の追認があるまでは有効な法律行為ではなく(したがって、管理組合にはその費用を支払う義務はありません。)、また、無効であることを確定させるべく、事後に管理組合が取り消すことができるのです。悪質な場合は「不法行為」に該当するとして管理会社に対し損害賠償請求できる場合も考えられます。そしてこれは、管理会社が自ら元請けする場合に限られるものではありません。管理会社と資本関係のある会社や取締役に同一人物が就任している他の会社等に仕事を発注する場合でも、利益相反行為とされる可能性があります。

善管注意義務

 さらに、事前の承認があれば良いというものでもないのです。「管理者」は管理組合とは委任の関係になり(建物の区分所有等に関する法律第28条)、「善管注意義務」が課せられます(民法第644条)。自らを請負者として大規模修繕工事を受注する場合など、事前に総会承認を得るとしても、管理者としてその議案を上程すること自体が善管注意義務を問われます。なぜ自社が元請けでなければならないのか、相見積もりや入札は適切に行われているのか、瑕疵担保責任は適切に追及できるのか、管理者として善管注意義務を果たそうとするならば、自社を元請工事会社とする議案上程など出来ないことは明らかです。

総会決議の方法

 そしてさらに、総会決議の方法も問題となります。管理会社を管理委託契約や工事の契約先とする議案は、管理者である管理会社が議長となる場合は、議決権行使の議長委任を受け付けることは出来ないのです。先に述べた民法第108条では、「あらかじめ許諾した行為」は有効となる旨定めていますが、「あらかじめ許諾」するか否かを決定する総会決議において、その議決権行使を、契約当事者であり利害関係者である管理会社が委任されるのは当然利益相反行為となり、そのような議案決議方法を執ることじたい管理者としての善管注意義務違反となるのです。


管理会社が管理者となることは、管理組合にとっても不利益となる可能性があるだけでなく、業務を受託する管理会社自身にとっても責任を問われる危険な行為なのです。

​ これを解決する方法、それは外部の専門家に管理者に就任してもらう以外にありません。

 

 

マンションに内在する問題

 日本は今、大変な勢いで高齢化が進んでおり、マンションも例外ではありません。平成25年4月23日に国土交通省にて発表された「平成25年度マンション総合調査結果について」を見ますと,マンションの世帯主の年齢について,60歳代以上が50%、70歳代以上に限ると18%以上との結果が出ております。今後10年でどれだけ高齢化が進むか、恐ろしい限りです。個人の高齢化等に伴う判断能力低下についての法的対策としての後見制度はできておりますが、マンションの場合の後見制度に該当するのが第三者管理になっていくと思われます。マンションの区分所有者の高齢化が進み、諸般の事情で理事会の適切な運営が出来ないときに、第三者に管理者となってもらうことが有効な対策となってくると考えられます。

 しかし現行の法制度には欠陥があると考えます。民法で定める後見人の制度には、本人以外の人(配偶者とか親族とか検察官とか)が後見開始の申し立てができ、裁判所にて後見人を選任できるようになっているのに対し、マンションには、「規約に別段の定めがない限り集会の決議によって」管理者を選任すると定めているだけであり、利害関係人からの申し立てでの裁判所による選任が定められていないのです。(解任は裁判所に請求できることとなっています。)これは、適切に総会を開催し、区分所有者が適切に議決権を行使しうる状態に無ければ、すなわち、高齢化等が進み理事会運営、組合運営が適切にできないところまで進んでしまえば、打つ手がなくなってしまうことを意味します。 「打つ手」があるうちに,体制を整えておくことが必要なのです。

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