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管理組合と管理会社の深い溝、委任と請負の違いが・・・・

マンションをお持ちの方(もちろん区分所有ビル、区分所有オフィスをお持ちの方も)、特に理事等の役員となった方は、管理会社の担当者の仕事ぶりに疑念を持たれることが多いと思います。「この人は本当に管理組合の為に動いてくれているのかな?」 以前の業界紙(マンション管理新聞)に、長くマンション管理会社の業界団体の長を務められた方のインタビューが載っていましたが、「マンション管理会社は何をやっても悪く思われる大変な仕事(趣意)」と言っておられました。

管理組合の皆様(役員や他の組合員)とマンション管理会社の間に 横たわる不信感の溝、このお互いの感覚の「ずれ」の本質は一体なんでしょうか。

この相互の「ずれ」の本質は、管理委託契約について、管理組合は、「委任」だと考えており、管理会社は「請負」と考えていることに尽きると考えます。

「委任」(より正確には民法656条の「準委任」となるのでしょうか。)であれば、管理組合に代わって、マンションの管理を行う事となり、管理組合の利益を代弁し利益相反行為はしてはいけないことになります。管理組合(役員)の気持ちは、「マンション側の利益を優先して仕事をして下さいね!工事等は一番安いところを探して下さい!清掃や保守点検の仕様も最も安くて内容はダウンしないものにしてくださいね!」 というものな訳です。 しかし管理会社は、「請負」と考えているので、 「契約書に書いてある業務をやっていれば文句は無いだろ!うちは工事もやるんだから工事は当然うちに発注して!清掃や保守点検の仕様を落としたらうちの売上利益が減るだろうが!」 と、考えています。 ですので、多くの管理会社が、 工事の受注 特別清掃等追加業務の受注 物品(消耗品や備品)の販売 に注力し、担当者の賞与や昇進査定に反映させています。

管理組合、お客様からすれば、「管理会社の担当者は私達の味方をしてくれるのだよね」と思っていたのに、実は なる営業マンで工事や色々なサービス、商品を売り付けようとして来ているだけだったとの事が、管理組合のストレスの元になっていたのです。

管理会社はこのずれを是正しようという気持ちはほとんどありません。各種サービスの向上は営業活動のツールとしか考えていません。顧客満足の向上と、言っても、売上利益の確保の為のものであり、値下げ要求回避の方策でしかないのです。管理組合はなにか釈然としないものを感じながらも他に有効な選択肢が見つからないので、管理会社のアドバイスに従い続けることになります。

この深い溝(川?)に不満・ストレスを感じている管理組合に上手く取り入って管理会社を排除し、工事を受注しようとする工事会社や管理費削減コンサルを受注しようとするコンサル会社(NPOなど)が現れて来ます。しかし彼らも本当に管理組合の利益を考えているわけではありません。工事はどこまでいっても請負契約ですから、工事を受注したらあとは経費・外注費を上手に削減して利益を確保することに注力するわけですし、管理費削減コンサルを受注したら、(削減幅が大きいほうが彼らの収入が増えるわけですから)、後先考えず(実質的仕様ダウンのことには目もくれず)経費削減に走り、挙句の果てには既存管理会社を排除し新たに受注できた管理会社から陰で(管理組合には分からないように)紹介料を貰うわけです。コンサル会社(NPO)も請負契約と考えているので契約業務を行えば後はどうやって上手く儲けるかしか考えていないのです。

そして、このような形で工事を行ったり、コンサル会社と契約した管理組合は後日、組合内部で不満・疑念が噴出することになります。 工事やコンサル業務を発注する経緯について、紹介した組合員が陰でなんらかの便宜を図ってもらっているのではないか等という疑念を抱かれたり、宣伝文句程には工事の質が良くなかったり、コンサルの結果、マンション管理に様々な支障が後日出てきたりしてしまうからです。

これらを回避するには、管理組合として、請負契約と委任契約を峻別し、本当の意味での管理組合の利益のために各種助言や業務代行を行う専門家である受任者と委任契約を結び、請負契約先(管理会社や工事会社)を監督してもらう必要があります。 もちろん、費用はかかりますが、真に管理組合の側に立ってアドバイスしてもらえるのは検討する価値はあるでしょう。

なお、本来、委任とは法律行為を委託するものであり、業として行えることが法令で言及されているのは弁護士や司法書士だけです。

2016年3月14日に国土交通省から発表された「マンション標準管理規約」には、外部専門家を役員とすることについて言及されています。一度、検討してみてはどうでしょうか。

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