ガラスの熱割れ・・・誰が負担するの?
窓ガラスは誰が修理するの? もちろんガラス屋さんですね。 しかし,ここではそれが答えではないことは皆さんお分かりいただけると思います。 分譲マンションのお部屋のガラスが割れた時,その修理(ガラス入れ替え)の費用負担者は誰かという問題です。 割ってしまった人が負担するのは当たり前です。しかし誰かが故意に割らなくとも,ガラスは割れてしまう場合があります。 風で何かが飛んできて割れてしまう場合もあります。所有者(居住者)がバルコニーにおいていた“物”が風で舞ってガラスにぶつかり割れたと思われるケースもありました。また,ガラスは“熱割れ”という厄介な割れ方をする場合があります。 以前,「熱割れ」の時の費用負担者はだれになるのかという相談を頂いたことがあります。 「熱割れ」とは,ガラスの内外の温度差が発生することによってガラスが割れてしまう現象です。 (熱割れについてはこちらをご参考ください。) https://www.asahiglassplaza.net/gp-pro/knowledge/vol16.html 全国宅地建物取引業協会連合会が策定した「アフターサービス基準」(分譲マンション用)では,窓ガラスについては,「ガラスの破損、網の破れは引渡しの際の確認時のみ。」となっているので,引渡し後に割れた場合はアフターサービスの対象外となります。したがってマンションの分譲会社が負担するものでは無いのは明らかですね。 そうすると,管理組合で負担するか,その部屋の区分所有者(居住者)で負担するかということになります。 マンションの管理規約ではほとんどの場合,窓ガラスは共用部分とされていることが多いでしょう。国土交通省策定のマンション標準管理規約でも各お部屋の窓ガラスは共用部分とされています。 (2016年3月14日に「マンション標準管理規約」の改定がなされましたので,以下この改定版に準拠して説明します。) 「マンション標準管理規約」では, (専有部分の範囲) 第7条 対象部分のうち・・・・ 2 前項の専有部分の他から区分する構造物の帰属については次のとおりとする。 一 略 二 略 三 窓枠及び窓ガラスは,専有部分に含まれないものとする。 となっています。 窓ガラスは共用部分というわけです。 (第14条で,窓ガラスはバルコニー、玄関扉、窓枠等と合わせて「バルコニー等」と定義され,専用使用権の対象となることが定められます。) 共用部分なのだから割れてしまった時の費用負担者は管理組合のはずだと主張される方が結構おられます。しかしながら・・・同第21条では,
(敷地及び共用部分等の管理) 第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。 となっておりこの条項に対するコメント(国土交通省による解釈の指針)として, 『バルコニー等の管理のうち、管理組合がその責任と負担において行わなければならないのは、計画修繕等である。』 『本条第1項ただし書の「通常の使用に伴う」保存行為とは、バルコニーの清掃や窓ガラスが割れた時の入替え等である。』 とありますので,窓ガラスが割れた時の費用負担者は区分所有者となることが明記されているのです。
窓ガラスが割れたときの費用負担者は区分所有者なのです。
なお,2016年3月14日改定のマンション標準管理規約では,『バルコニー等の破損が第三者による犯罪行為等によることが明らかである場合の保存行為の実施については、通常の使用に伴わないものであるため、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。』とされました。これ以前のマンション標準管理規約にはこのコメントはなく,逆に『コンメンタールマンション標準管理規約(日本評論社)』では,外部からの侵入等による破損は「通常の使用に伴う」ものであり専用使用権を有するもの(区分所有者)の負担と責任で行うとされていたので,この点は今回解釈の変更がなされたと言って良いでしょう。 もう一度整理しますと,窓ガラスが割れたとき(区分所有者=専用使用権者の故意過失による場合を除く)の費用負担者は, ①計画修繕の場合は管理組合 ②第三者の犯罪行為等によることが明らかな場合は管理組合 ③その他の場合は専用使用権者(区分所有者) となるわけです。 したがって,台風で何かが飛んで来て割れた場合や,“熱割れ”の場合は区分所有者の負担となります。 台風は全く外的要因ですが,冒頭に述べたようにぶつかる物がバルコニーに置かれている場合もあります。 熱割れも,完全に防ぐことは難しいのですが,内外の温度差によるもののため,室内の使い方も作用して発生するものであることは否めません。 割れてしまった区分所有者さんの心情としては自己負担となることは“納得できない!”となるかもしれませんが,結局は自ら直接支出するか,毎月の払っている管理費・修繕積立金から支出されるかの違いです。(戸建てに住んでいるならば熱割れは全て自己負担です。) 管理費・修繕積立金は区分所有者全員から公平に集めた,いわば“公金”なので,おのずと支出には一定の歯止めがあるのだと思ってください。 管理組合で加入している火災保険に「破損汚損特約」がついている場合,ガラスの熱割れも保険金の支払対象となる場合がありますので,確認してみて下さい。この場合は割れたガラスの修理費は保険でカバーされることになります。 保険は,特定の方にリスク,費用負担が集中するのを防ぐ効果があります。破損汚損特約をつけていない組合は次回更新時期にぜひ検討されてはどうでしょうか。