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着服被害に対し理事長,会計監査に賠償責任の判決がでました。

業界紙「マンション管理新聞」の1月15日号に衝撃的な記事がありました。 マンションの会計担当が10年もの長期に渡り総額1億円以上もの着服をし,その間,預金通帳の確認などを行っていれば着服を防げたとして,当時の理事長と会計監査担当役員に464万円もの前管注意義務違反により損害賠償が認められたというものです。(東京高裁で判決は確定) このマンションは戸数は40戸弱,着服期間は1998年から2007年まで,当時は自主管理であり,印鑑と通帳は着服していた会計担当役員が所持していたとのこと。自らワープロで作成した残高証明書で発覚を免れ,通帳の写しや原本のチェックはされていなかったとのことです。 判決では「預金通帳をチェックしていれば着服の事実を把握でき損害を回避できた」と指摘され着服には関与していなかったにも拘わらず,理事長と会計監査担当役員に損害賠償責任が認められたとのこと。

私の考えるポイント(本件の問題点)としては

①自主管理であれば通帳も管理組合が保管することになるのであるが,通帳と印鑑を同一人物(着服した会計担当役員)に所持させていたこと。

 →このため着服・横領が可能になったわけです。この時点でアウト。 ②この会計担当役員がワープロで作成した残高証明書を見抜けなかったこと。

 →これは酷いです。しっかりと原本確認しなかったのでしょうか。銀行に一本電話すれば直ぐにばれる話です。記事では単に「ワープロで作成した」とあるだけで,“精巧に偽造された”とは書かれておりませんので,ちょっと注意して確認していれば十分判別出来たと思われます。 ③通帳を当該会計担当役員が持っていたにも拘わらず,原本確認をしなかったこと。

 →自主管理では通帳確認を監事(監査担当役員)が行うことは必須です。できれば毎月の理事会等の際,少なくとも半期毎には行い,会計業務が適切に行われているか確認すべきです。

の三つが挙げられます。

これらは,自主管理を行うマンションでは絶対に守らなければならないポイントです。 たとえ管理会社に管理委託している場合であっても, ①印鑑は理事長,通帳は管理会社が所持していることを確認。 ②決算時の残高証明書原本確認 は必須です。管理会社の信用力に問題がある場合はさらに ③管理会社を訪問して通帳原本の確認 が必要になる場合があります。(管理会社の担当フロントに「通帳を持って来て」と依頼して簡単に通帳を持って来てしまうような管理会社は要注意。そこで印鑑を持つ理事長に通帳を渡されては大変なことになる可能性があるからです。)

自主管理マンションであるかどうかに拘わらず,適切な監督,監査体制をとることが重要です。時には,外部の専門家に入って頂き,管理会社の監督や会計監査の支援を受けることもマンションの皆さんの財産(建物のみならず管理費・修繕積立金も財産)を守るためには必要なことなのです。

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